第5回SRサロンのご報告
第5回SRサロンのテーマは、SDGsの「目標4:質の高い教育をみんなに」と、「目標5:ジェンダー平等を実現しよう」です。それぞれのテーマに沿った活動をされている方々をゲストスピーカーとしてお招きし、お話しを伺いました。
<写真:お話をする城間かおりさん(右側)>
一つ目のテーマ「質の高い教育をみんなに」では、愛知県西尾市で活動されている社会福祉法人せんねん村・多文化ルームKIBOUの川上貴美恵さんと城間かおりさんにお話を伺いました。現在、多文化ルームKIBOUでは、西尾市からの委託によって外国にルーツを持つ子どもたちのための教室を開設されています。特に、5歳から18歳までの不就学・不就園状態にある子どもたちへの就学・登校・学習支援を目的に、その枠に収まらない支援も含めて(つまり、市の委託ではない部分も、利用者のニーズに応じて引き受けて)幅広く活動をされているのだそうです。
活動のきっかけは、2007年のリーマンショックにより外国籍労働者の失業が急増したことなのだとか。親の失業によって子どもたちの生活も不安定になり、学校へ行かない・行けない子どもたちが増えたために、就学援助が必要になったのだと伺いました。
多文化ルームKIBOUの活動は、上述した就学・登校・学習支援のほかにも、「母語保持クラス」や日本の文化に親しむイベントなど、実に多岐にわたっています。おそらく愛知県内でも、これほど充実したメニューを持つ団体は他にないのでは?と思いました。ちなみに、平成29年度に通所した子どもたちの数は161名だそうです。このお話を伺う前に一度、多文化ルームKIBOUさんの施設を訪れたことがあるのですが、10名も入ればいっぱいになってしまうくらいの、決して広くないスペースでした。そこで、いかに多様なサポートをされているかということが想像できました。
後半、2グループに分かれてのトークの際、「多文化ルームKIBOUが合わなくて辞めていく子どもはいないのですか?」という参加者からのご質問に、「私たちは福祉のセイフティネットの、おそらく一番下の部分を担っているので、ここで合わない子どもたちはいません」というお返事でした。多文化ルームKIBOUの、しなやかな強さに感銘をうけました。教育の「質の高さ」を追求する以前に、そもそも教育を受ける機会を奪われている子どもたちがたくさん日本にいることや、その子どもたちに必要な支援のあり方を、改めて考える時間となりました。
<写真:お話をする渡辺いづみさん(右側)>
二つ目のテーマは「ジェンダー平等を実現しよう」です。ハンドメイドアクセサリーの制作、販売をする「にじたまり」というお店を運営されている、渡辺いづみさんをお招きしました。にじたまりでは主に、LGBT(セクシュアル・マイノリティ)のシンボルでもあるレインボーカラー(虹色)を取り入れたアクセサリーを制作し、それらを、LGBT関連イベントでのブース出展などをとおして販売されているのだそうです。まだ、お店を初められて間もないため、今後、インターネット販売やオーダーメイドも充実させていきたいとお話をされました。
にじたまりの活動を始められたきっかけは、渡辺さん自身が学生時代のころから感じてきた、LGBTへの無理解-ただ単に異性愛者ではないというだけで投げかけられる、不躾なからかいの言葉や偏見-に対する悲しみや憤りがあったことだとのこと。そうした社会の理解のなさに対して、自分にできることを模索した結果、自分がもともと好きだった「ハンドメイド」をとおしてLGBTへの共感や理解を広げられたらと、現在の活動を思いつかれたのだと伺いました。単に利益を上げることが目標ではなく、売り場でのお客様とのコミュニケーションや販売活動、さらには身に着けてもらったアクセサリーが媒体にもなってLGBTへの共感が広がることが目標だとのことでした。確かに、明らかに啓発目的だとわかるメッセージ性の強いアクセサリーよりも、身に着けることを楽しみながら共感を広げられるものの方が手に取りやすいし、人にも差し出しやすいように思います。
さて、「ジェンダー平等」というテーマを考えるとき、皆さんが真っ先に思い浮かぶ課題は何でしょうか?世界的に見れば、女性や女児に対する差別や暴力の根絶、あるいはケア(つまり無報酬労働)の評価と経済的な男女の不均衡の是正などが主な課題に挙げられています。また、日本の重要な課題として取り上げられているのは、女性への暴力に加えて、特に他の国と比べて著しく改善が遅れている政治的・経済的な男女の格差の問題です。しかし、日本にはそれらに取り組む前に、格差や差別、暴力の解決に欠かせない「多様性の包摂/ダイバーシティ」が、課題となって横たわっているように思えてなりません。ジェンダー平等の実現に向けては、セクシュアリティの多様性に対して不寛容な日本の社会を変えていく必要がある。そういう思いを強くした時間となりました。
<写真:後半のグループトークの様子。奥に川上さん、手前右側が渡辺さん>
最後に、第5回目の企画を準備するにあたって、できれば、このテーマに合った会場を使いたいと考え、今回は名古屋市中区栄にあるダイニングバー「Queer’s(クイアーズ)」をお借りしました。どのようなセクシュアリティの人でも集うことができる場をめざし、独自のイベントなども企画・開催されているお店です。SRサロンは今後も、企画の主旨に沿った会場で開催するなど、さまざまな工夫をしながら続けていきたい、と考えています。次回以降も、どうぞお楽しみに!(中村奈津子)