第6回SRサロンのご報告
2018年12月11日(火)に第6回SRサロンを開催しました。SDGsの17の目標のうち、今回のテーマに取り上げたのは、目標12「つくる責任、つかう責任」と目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」です。
最初に目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」に関連する活動として、長久手市が進めてきた、市民参加によるまちづくりの取組みを伺いました。長久手市役所職員(現在、市長公室経営企画課に所属)である長谷川礼菜さんから、長久手市の特徴をふまえながら、主に現在進行中の第6次総合計画(愛称:ながくて未来図)策定のプロセスと市民参加を促す工夫についてお話を伺いました。また、市民として長久手市のまちづくりに関わってきた新見永治さんからも、市民がまちづくりに関わることの意義や関わってみての実感など、パートナーシップの成果と課題についてコメントをいただきました。
長久手市は、東洋経済新報社が発表している自治体の「住みよさランキング」で全国2位(2018年度)を獲得するなど、暮らしやすさの度合いが全国トップレベルのまちです。平成27年国勢調査において、平均年齢が全国で最も低い(38.6 歳)自治体でもあり、県内で、人口増加率(自然増、社会増ともに)が最も高い市なのだそうです。「若い世代が多く、住みやすい」=「活動的で、市民活動や住民参加のまちづくりに意欲的な人が多い」とイメージをしてしまいがちですが、もちろん実際はそんなに簡単な話ではなく、他の市町村からの移住者が多いからこそコミュニティへの帰属意識を持ちにくいなどの課題もたくさんあると伺いました。お話を伺っていて素晴らしいと思ったのは、市民の工夫を受け入れる、「余白のあるサービス」が念頭にあること。市民生活に身近な計画や公共施設は、できるだけ多くの市民と一緒に考えようと、市役所をあげて取り組んでいるとのことで、その実践の積み重ねが市民と職員の信頼関係を築いていくのでしょう。お二人が生き生きした様子でお話をされるのが、とても印象に残りました。
その後、今回の会場(本堂をお借りして開催しました!)をご提供いただいた、名古屋市中区新栄にある賢隆山久遠寺の副住職の高山信雄さんより、久遠寺で取り組んでいる「おてらおやつクラブ」の取組みを伺いました。「おてらおやつクラブ」というのは、お寺に集まる「おそなえ」を、仏様からの「おさがり」として、経済的に困難な状況にあるご家庭へ「おすそわけ」をする社会貢献活動のことです。今回は目標12「つくる責任 つかう責任」というテーマに関連した活動ということでお招きしましたが、高山さんからは冒頭に「私たちの活動の一番の狙いは、子どもの貧困を解決すること。SDGsでは、むしろ目標1の「貧困をなくそう」が当てはまると思います」とのお話がありました。
世界を見渡すと、発展途上国では「絶対的貧困」が起きている一方、日本には格差社会の影響による相対的貧困があるといいます。「日本の子どもの7人に1人、ひとり親家庭の2人に1人が貧困状態にある」というのはよく知られたデータですが、相対的貧困は見えにくく、そのような状態にある人は経済的な支援だけでは解決しない困難も抱えていることが多いため、その解決は容易ではありません。おてらおやつクラブでも、貧困を「貧乏(経済的困窮)」と「孤立(社会的孤独)」が合わさったものと定義し、孤立の解消も視野に入れた活動をされていると仰ったことが印象に残りました。
また、日本は非常に残念なことに、食品廃棄率が世界一の国です。国民一人当たり、毎日おにぎり2個を食べずに捨てている計算になるのだとか。当然、私たち一人ひとりにも食料の生産と消費には自覚的であることが求められます。おてらおやつクラブの取組みを伺いながら、自らの「つくる責任 つかう責任」のことが頭をよぎりました。「できるときに、できることから、少しずつ社会に貢献していくことが、社会全体を良くしていくと信じています」との高山さんのお話しは、とても納得ができるものでした。
今回は比較的関連性の薄いテーマ2つを選んだと思っていたのですが、話を伺ってみて、互いが密接に関連していることにも気づきました。改めてSDGsの17のテーマは、どれも関連性が高いものであり、どの視点も欠かすことができないものだと感じた次第です。お話くださったゲストスピーカーの皆さん、ご参加くださった皆さま、貴重な時間をありがとうございました。(中村奈津子)